日本学術振興会研究拠点形成事業B
アジア・アフリカ学術基盤形成型(2018~2021年度)
東南アジアにおける気候変動適応科学のための研究拠点ネットワーク形成

日本学術振興会(JSPS)の支援を受け、4年間にわたる「東南アジアにおける気候変動適応科学のための研究拠点ネットワーク形成(Southeast Asia Research-based Network on Climate Change Adaptation Science:SARNCCAS)」事業を進めてきました。本事業は、当初2020年度までの3年間の予定でしたが、コロナ禍のため2021年度まで期間延長されました。

本事業の目標は、①東南アジアの地域性を考慮した新しい適応研究アプローチの開発、②各国・地域で社会浸透させられる実践的な適応オプションの提示、③若手研究者育成と研究拠点ネットワークの構築の3点です。これらを達成するために、茨城大学の研究機関ICAS(地球変動適応研究機関:2018~2019年度)・GLEC(地球・地域環境共創機構:2020~2021年度)が主導的な役割を果たしてきました。

本事業では、ベトナムの日越大学、タイのプーケット・ラチャパット大学、インドネシアのボゴール農科大学、フィリピン大学ロスバニョス校などの研究者をつなぐ気候変動適応科学のための研究拠点ネットワークを形成してきました。そして、情報共有・意見交換を行う国際セミナーや国際ワークショップを年1回のペースで開いてきました。ローカルな知をインターローカルな知へと発展させていき、それによって各国・地域に固有の問題を他との比較によって相対化して捉え直す試みを実践しています。そして沿岸影響、防災、農業・生態系影響の各テーマで、それぞれの国・地域で社会浸透させられる実践的な適応オプションを生み出しつつあります。

2018年度・2019年度はベトナム・ハノイにおいて対面で、コロナ禍の影響を受けることになった2020年度・2021年度は、全面的にオンラインでのセミナー/ワークショップを実施しました。同じ場所に集って議論したりすることが難しい状況でも、オンラインならではの工夫を凝らし、ベトナム中部の海岸からフィールドワークのオンライン中継を行ったり、茨城大学附属中学校の生徒が発表する機会を設けたり、またmiroという マインドマップツールを併用した多声的なやりとりをZoomでのオンラインと同時並行で行ったりしました。若手研究者も多数参加しています。

これまでネットワークに参加してきたメンバーで執筆した“Sharing interlocal adaptation lessons: Climate Change Adaptations and Development in East and Southeast Asia (東・東南アジアにおけるインターローカルな気候変動適応:農業・減災・資源管理における智慧を共有する)”というオープンアクセスの本が2022年初頭にSpringerから出版されました。この成果を踏み台に、さらに外部の関連するネットワークとつながっていくことを考えています。また2022年度以降は、オンラインの月例研究会を開き、若手を中心に研究交流を状態化させ、いっそうインターローカルな連携を進めていきたいと考えています。

日本側コーディネーター:伊藤哲司(茨城大学人文社会科学部教授/GLEC兼務教員)