農業・生態系環境適応部門

気候変動下での持続可能な土地利用・農牧業システム、適応型栽培技術の開発、生態系での植生回復や土壌・水系物質循環保全などをテーマとします。また、人間居住域(農村)とその周辺(里山)を対象に気候変動など環境の変遷に伴って生じる変化のメカニズムやそれに対する適応策を研究します。


◆◇部門紹介◇◆

最近、大気中の一酸化二窒素(N2O)の濃度は急激に高くなっています。NOは、温室効果ガスであると同時に、21世紀のオゾン層破壊の最大の原因物質だと言われています。その温室効果は、二酸化炭素(CO)の約300倍にもなります。地球環境の変動によって、バイオマス(木材やプランクトンなど、動植物から生まれた再利用可能な有機性の資源)の生産にも影響を及ぼすことが懸念されています。

そのため、今後、農業・生態系環境適応部門では、いかにこの窒素循環を制御していくかということを大きな課題として掲げています。窒素を放出する人為的な主な要因には、農用地の土壌や家畜排泄物の管理が挙げられます。農業を行う際、農地で使われる窒素肥料や家畜の糞尿が土壌に吸収されることで、硝化と脱窒という科学反応が起こり、NOが生成されます。COやメタンの場合は、作物栽培や品種改良などによってある程度の生成の制御が可能ですが、NOの場合は、一度生成されてしまうと制御するのは難しいということが分かっています。これらの科学反応はいずれも微生物反応によるもののため、NOが生成される段階で、微生物をコントロールすることが、NOの大量発生を抑制する上で重要だと考えています。これ以外にも、微生物は食糧となる植物への栄養供給にも深く関わっているなど、生態系にとって欠かせない存在であり、今後、農業・生態系の環境問題の解決を目指す鍵となっています。

農学部では、これまで県南地域の里山、農地保全へと貢献する多くの活動が実施されてきました。農業・生態系部門では、今後このローカルな研究成果を起点として、グローバルな局面にも目を向けていくことを目標としています。特に、農地生態系・水資源(霞ヶ浦)を守ることや温室効果ガス排出削減の技術開発などを視野に入れています。それと合わせて、今後はGLECでの活動を通じて、マクロからミクロな分野にまで、幅広い研究分野を共創的に結合していければと思っています。そのために、農学部だけで課題を完結させるのではなく、他学部や農家の方々も課題を共有しながら、連携して取り組んで行きたいです。

普通に育てた稲と特定の遺伝子を破壊した土壌微生物で育てた稲とを比較するユニークな研究

~学生へ向けて~

学生の頃の様々な経験や周囲の人との交流は、将来の糧となります。興味があることに対して、失敗を恐れずにチャレンジすることで、思い描いている将来を実現していけるような力を身に着けてほしいと思います。

西澤 智康(農業・生態系環境適応部門長)