11月21日に4名の中間発表を行いました。それぞれの指導教員の先生のもとで行った実践的な研修は大変刺激的な経験になったようです。

4名のMCCDプログラム学生とのインタビューを是非ご覧ください。

対象者 Thai Trong Nghia

指導教員 茨城大学阿見キャンパス 吉田先生

日本人の「綺麗な水」に対する意識の高さを実感

―今回、阿見キャンパスの吉田先生の研究室訪問はどうでしたか。

Nghia)普段、VJUでは「水資源管理」について研究しています。ベトナムの養殖事業として、バサ(pangasius)やナマズ(catfish)などが使われていますが、最近、家庭から出る生活排水やゴミ、工業排水などの影響が主に河川・湖沼などに水質汚染をもたらしています。特に中国やカンボジアなどの近隣諸国からの汚染水の影響が強い傾向にあります。

今回、農学部の吉田先生ご指導のもと、滋賀県高島市針江地区に行き、地元での水管理方法を見に行きました。そこでは、山に降った雪や雨を各家庭に自噴させ、それを飲料や炊事などの日常生活に利用する「川端(かばた)」と呼ばれる文化が存在しています。

そこで特に感心したことは、地元の人々はもちろんのこと、観光客も水を綺麗に保とうという意識(soft adaptive capacity)が高いということでした。それに加え、豪雨などの水災害に備えた河川のインフラ整備(hard adaptive capacity)などに対して、国が一体となり、きちんと財源を充てているということです。

今後はベトナムにおいても、日本と同様に、観光客に対して「ゴミを捨てない」という基本的な部分から、環境保全への認識を高めていく必要があると感じます。そうして、地元民と観光客とが一体となることで、将来的には国が具体的な治水計画を講じるための後押しができたらと思っています。

湧水を利用したコイの養殖

地域住民による水路の維持管理

落差を用いた小水力発電(右の街灯へ電力を供給)

 

対象者 Vu Thuan Yen

Tieu Thi Diu

指導教員 筑波大学 日下先生

日本での実践的な経験が今後の研究の糧となる

―今回の筑波大学の日下先生の研究室滞在はどうでしたか。

Yen)今回、筑波大学の日下先生の研究室をThiさんと2人で訪問した際、先生と学生がインタラクティブに研究活動している様子を目の当たりにしたことで、日本の教育環境が大変充実していることを実感しました。

またVJUでは実践的なカリキュラムが存在していませんが、今回初めてこれまで培った知識をもとに、気象観測データを使って、数値シミュレーションをすることができたことは、とても有意義な経験でした。研究室には、Doanさんというベトナム人研究員の方がヒートアイランド現象の将来予測モデルを作成しているところを見せてもらいましたが、日本ではこのような分析結果が将来予測につながるという技術力の高さを実感しました。

 

近隣諸国の研究者との協力関係を広げたい

―普段の研究について、また今後の進路について教えてください。

Thi)私は「環境緑化」について研究しています。ハノイなどの都市で進んだヒートアイランド現象はゲリラ豪雨被害などを引き起こす原因となっています。それを抑制するための有効な都市緑化方法について研究しています。現在、ベトナムでは研究者が政府に対して、気候変動に関する具体的な対策をとれるように後押しするような情報(Input data)を提示しても、国が具体的な対策を講じるまでにはまだまだ大きなギャップがあると感じています。今後は、これまで蓄積されたデータ結果を具体的な政策(Output)として打ち出していく必要性を強く感じています。

当面は、奨学金制度などを利用して、茨城大学で日本語のコースを学べたらとも考えています。

 

Yen)私は「温暖化による熱波と人に及ぼすストレスの相関関係」をテーマに研究しているのですが、人は気温と湿度が高くなったり降水量が増えたりすると、不快感、熱中症発症などの身体的ストレスを受けやすくなります。ハノイなどの都市ですでに起きているヒートアイランド現象が今後温暖化によって進むと、このようなストレスはますます高くなることになります。

ベトナムは多くの近隣諸国に囲まれた国です。今後は他国の研究者や組織と協力して、各国に適用できる適応策を打ち出していく必要があり、むしろそれらを効果的に使って、国の政府が具体的な政策を打ち出せるような提案をしていけたらと考えています。ちょうど先日、タイやラオスなど近隣諸国の研究者の集まる学会に参加してきましたが、アジアの各国が協力して気候変動に関する情報提供をしていくことは、今後ますます求められてくると実感しました。

そして将来は、そのような多文化環境のもとで仕事ができるような気候変動関連のNGOに就職できればと考えています。

 

対象者 Tran Viet Huong

指導教員 福島大学 坂本先生

関連施設の見学を通じて知るソーラーパネル導入の実態

―今回の福島大学の坂本先生の研究室滞在はどうでしたか。

Huong)日本でのインターンシップで印象的だったのは、指導教員の福島大学坂本先生の研究室を訪問するにあたって、初めて乗った新幹線です!とても快適で驚きました。

VJUでは、「再生可能エネルギー活用」について研究しています。ベトナムではまだまだ、再生可能エネルギーが普及するには至っていません。特にベトナムの小中学校の教育でどのように普及啓発していけばいいのかということが研究テーマです。

今回、坂本先生の研究室での研修、福島市の小学校や大学見学、インタビューを通じて、日本での再生可能エネルギー事業の一環としてのソーラーパネルの導入実態について学びました。また、千葉のイオン環境財団を見学し、再生可能エネルギー活用の啓発と教育を目的として、ベトナムを含めたアジアの小中学校へ太陽光発電システムを寄贈していることを知りました。ベトナムに比べて、日本では随分とソーラーパネルが一般住宅、学校を含めて普及していることを知りました。

今後、このような太陽光発電システムによる環境への効果を普及させるには、まずベトナム人教員への教育・啓発が求められていると考えます。これによって今後、政府が太陽光発電システム導入を推進する後押しをしていけたらと考えています。

千葉イオン環境財団にて