10/28より長期で滞在していた7名の学生が各研究室での研究の他、茨城キリスト教大学と常磐大学の学長インタビュー、月ノ井酒造・株式会社諸岡・環境省訪問等を行い、12月13日に帰国いたしました。インタビュー記事をどうぞご覧ください。
Nguyen Thi Dang Hueさん
指導教員 ICAS 田村先生 竹内先生
プラスティック削減に向け市民のできる”positive action”の模索
―長期滞在において印象的だったことについて教えてください。
インターンシップで特に印象的だったことは、企業訪問でベトナムに進出している月の井酒造(大洗)の社長さんにお話を伺ったことです。会社としての取り組みや現地での苦労話などのお話を聞くことができ、とても有意義でした。また茨城大学の華茶道部で、茶道体験をし、日本文化と深くつながることができたことも貴重な経験でした。
普段の研究テーマは「使い捨てプラスティックの削減に対する人々の意識」です。今回の実習で、「使い捨てプラスティックにおける意識」についてのアンケートを作成する過程で、先生方にアンケートの目的を明確にした方が良いとの助言を頂き、丁寧にサポートして頂きました。
現在、ベトナム、日本双方において使い捨てプラスティックによるゴミの集積が問題となっています。特に、日本においては埋立地の不足、ベトナムにおいては将来の人口増加によるゴミの増加が挙げられます。これに関して現在の対策には限界があるため、市民の意識調査を通じて、今後別の対策を検討し、ここから市民が習慣にできる”positive action”を提案したいと思います。
茨城大学華茶道部訪問
日本文化(茶道)体験
Be Ngoc Diepさん
指導教員 理学部 若月先生
影響予測モデル・ベトナム版の作成の複雑さを実感
―長期滞在において印象的だったことについて教えてください。
日本滞在中、1番印象的だったのは日本のトイレです!滞在初日に、非常用ボタンを洗浄ボタンと勘違いして押してしまい、スタッフの皆さんに助けてもらったことは今後忘れることはできないと思います。また、研究室では、先生と学生が質疑応答を繰り返していて、先生は学生の作成した資料により良いフィードバックを与えてくれるなど、研究を行うのにはとてもいい環境だと感じました。
私の研究テーマは、「ベトナムにおける降雨量の推移」です。今回の実習では、ベトナムに適応した降雨量の観測モデルを作成するために、日本の降雨の観測モデルをベースにしながら、ベトナムの持つ“中心部に山が多く、降雨量が多い”という地形的特徴と、“雨季と乾季が存在する”という季節の特徴による気候条件をうまく組み込む必要があり、とても苦労しました。ですが、先生と学生の協力を得て、最終的には降雨量のベトナム版観測モデルを作成できたことが今回一番の成果です。今後は、ベトナムのセキュリティ環境の不安定さを考慮して、先生に今回作成した観測モデルに対応する保護用ソフトを取り付けてもらったので、ベトナムでも継続して観測を続けていけそうで嬉しいです。
今後の課題は、より様々な条件を踏まえた実際に近い降雨量データ取得を目的に、ベトナムのみならずラオスやカンボジアなどの近隣諸国からの気候変動による影響をふまえた降雨モデルを構築していくことです。
歴史館における十二単衣着付体験
Pham Thi Oanhさん
指導教員 ICAS 田村先生
実習で得た実践的知識を帰国後も生かしたい
ー長期滞在において印象的だったことについて教えてください。
日本に来て、交通環境がとても整備されていることに驚きました。また日本の秋の美しさ、自然の豊かさに感激しました。特に、日立の御岩神社がとても綺麗で感激しました。
私の研究テーマは、「メコンデルタにおける海面上昇へのグレーンインフラとグリーンインフラの活用」です。メコンデルタでは、地形的な要因もあって海面上昇からの浸水被害が深刻な状況です。多くの人々が暮らしており、生活面での被害はとても大きいのにも関わらず、具体的な被害状況を示すような研究データが十分蓄積していないのです。今回の実習で、これまで使ったこともないような技術の使い方を先生から教わり、将来のメコンデルタにおける影響予測を行いました。その技術を上手に使えるようになるまでに時間を要しましたが、先生との度重なる議論を通じて、最終的には十分な結果を得ることができたと感じています。今後は、今回の結果を生かして、海面上昇からの浸水被害対策として、堤防を用いたりマングローブ林を活用したりするなどの具体的な将来への適応策の提案へとつなげていきたいと思っています。
インターンシップ最終報告会の様子
MAI EI NGWE ZINさん
指導教員 農学部 成澤先生
予想外の結果に対して課題解決したことが、今後の自信の糧となった
―日本滞在において、印象的だったことを教えてください。
研究室では、施設環境が充実しているため、研究に集中できる環境が整っていることに感激しました。また、先生を初め経験と知識が豊富な学生が丁寧にサポートしてくれました。今回の実習で、根部エンドファイト(DSE)という微生物を活用して、水稲(コシヒカリ)の発育状況について観察しました。水稲の根にエンドファイトを投与して、稲が生育する様子を観察をしていたところ、驚いたことにエンドファイトとは全く別の微生物(バクテリア)が、不純物として根幹部に出現してしまったのです。そこで、まずその微生物がどのような特徴を持っているのかを確かめるために、DNAテストを行ったところ、どうやらその微生物は外から紛れ込んできたのではなく、水稲の種に元々存在していたものだったことが分かりました。そこで学生のサポートにより、微生物の発育を阻害する抗生物質(antibiotics)を投入して、余分な微生物を分離させて、エンドファイトのみが稲に根付くようにしました。その結果、エンドファイトを活用した水稲の生育状況についての十分な実験結果を得ることができました。
今回の予想外の過程を経て、先生や学生からは、エンドファイトと今回出現した新たなバクテリアの両者を共存させると植物がどのように生育していくか、という未知なテーマに関して取り組んだらどうかとの助言をもらいました。今回の実習で課題解決ができたことへの自信を糧に、今後はその未知なるテーマに取り組めたらと思っています。
茨城県農業センター訪問
Vu Kim Duyenさん
指導教員 ICAS機関長 伊藤先生
様々な方との出会いにより、研究目的がより明確に
―日本滞在において、印象的だったことを教えてください。
インターンシップで一番印象的なのは、私自身が変わったということです。とにかくホテルの周りをたくさん歩いたので、ベトナムにいる時よりも健康的な生活を送れることができたことと、長期滞在であったため、日本の文化・人間・食事とじっくり触れ合いながら、研究を進めることができ、とてもいい環境でした。
私の研究テーマは、「温室効果ガス削減に向けた学生の行動」です。滞在中は、常盤大学、茨城キリスト教大学の学長、早水先生(元環境省、茨城大学客員教授)、亀山先生(国環研)にお会いする機会を作って頂き、インタビューをさせてもらいました。そこでは、環境問題の解決へ向けた各機関の持つ目的や課題、そのための教育提言、地域社会への経済的アプローチ、学生のライフスタイルの変化など、課題解決のためのいくつかの要素に分けてお聞きしました。これまでは自分の中で、将来のために誰が何をすべきかという問いに対しての順位付けができずにいましたが、今回のインタビューを通じて、各要素から明確な順位付けができ、自分なりに答えを見出すことができました。
茨城キリスト教大学東海林学長と
将来は、環境に関連するNGOで働きたいと思っています。ベトナムの地域の抱える問題はゴミ問題、農業問題、森林問題など多数あります。その中で、日本人が固有に持つ“もったいない”という感覚を生かした「もったいない政策」などの課題解決法を地域社会の中で共有できるような仕事ができたらと考えています。
JICAインターンシップ生来日記念交流会の様子
Dao Thi Thu Hangさん
指導教員 農学部 増冨先生
今回得た知識や技術をどう有効に使っていくのかが今後の課題
―日本滞在において、印象的だったことを教えてください。
日本は空気も澄んでいて、観光地がたくさんあること、また日本人の気質がまじめで優しいことを実感しました。また、大学内は施設が整備されており、先生が技術の使い方をはじめとても丁寧に指導してくれることに感銘を受けました。
私は、「気候変動が農業に与える影響」について研究しています。ベトナムでは、温暖化による将来の米の収量の減少が懸念されています。今回の実習では、外気温の観測データを使用して、将来の米の収量に関するモデル作成を行いました。最も苦労したことは、外気温の上昇による水稲の葉、根、穂への影響などのより複雑な条件もふまえて、より実態に近い将来の米の収量予測を行うことです。今後は、日本で行ったモデルの知識を生かして、ベトナムに適用した将来の米の収量予測モデルを作成するつもりです。ただ、あくまで予測モデルは手段であり、それを効果的に使って、市民に対しては気候変動問題の知識の共有に生かしていくことで、課題解決の道筋を作っていけたらと考えています。
弘道館見学
Do Duy Tungさん
指導教員 理学部 北先生
学生側から見て取り組みやすいMCCDプログラムの構成
―日本滞在において、印象的だったことを教えてください。
インターンシップでは筑波山での経験が印象的でした。自分の足で登ったため、日本の自然の美しさを肌で感じることができました。また、MCCDプログラム学生の中には、母親だったり、他に仕事を持ちながら学んでいる学生もいたりと様々な生活スタイルを持っているため、短期実習と長期実習とで分かれて参加することができ、学生側から見ても取り組みやすいプログラム構成だったと思います。
私は、「ベトナムにおける健康被害の軽減や農作物の収穫量改善などにつながるSLCPs(気候汚染物質)の削減」について研究しています。SLCPsとは、化石燃料やバイオマスを燃焼させた際に発生する物質を表し、気候を温暖化させる特性を強く備えている物質のことを指します。今後の気候変動問題へのより有効な対策として、二酸化炭素(CO₂)の削減だけでは十分でなく、このSLCPs(気候汚染物質)を少しでも削減していくことが必要とされています。
研究室では、先生がモニタリング装置などの使い方を丁寧に指導してくれて、研究計画がうまく遂行するようサポートしてくれました。また、福島と金沢の地方気象台を訪問するにあたり、震災による影響を強く受けた地域であったため、事前に許可を取得してもらい、スムーズに現地訪問することができました。そして、そこでの大気圏観測データが震災以降の人々の生活により多くの安心感を与えていることを実感しました。今後は、今回使用したような新しい技術、集積データ、気候変動関連の文献をうまく収集しながら、自然科学研究に関する方法論を自分なりに確立していきたいと考えています。
茨城学生国際会議参加の様子
会議後のレセプションの様子