ベトナム調査(2015年11月22日~12月1日)
環境省S-14、科研費研究の一環で、ICASメンバー(安原・伊藤・田村・安島・熊野)がベトナムの現地調査を行いました。本ベトナム調査はICAS発足時から毎年約2回継続して行われているものです。べトナムでは、潮の流れによって急速に海岸線が侵食され問題になっています。海岸線が侵食されると、人々の生活の場はもちろん、農業や漁業の生産の場・憩いの場を失う深刻な問題です。今回は、とくに浸食・堆積の傾向が著しいソクチャン省ビンチャオ県(南部)とナムディン省ハイハウ県(北部)にて調査しました。調査の過程ではUAVによる空撮も行いました。
・ソクチャン省ビンチャオ県
水資源大学のVan准教授、Song准教授とともに調査しました。Tan Phu Dong海岸では土の堆積傾向が確認され、地元住民が海岸沿いに土盛りしてつくった簡易堤防や、堆積した場所に植生したマングローブ林の様子を視察しました。また、地元住民にインタビューを行い、現地での生活の実態について聞きました。一方で、Vinh Chau海岸では土の侵食傾向が著しく、海岸沿いの地盤がえぐられた結果、2014年6月には確認できたマングローブ林がほぼ消失していました。この侵食対策として現在進行中の堤防設置工事の様子などを視察しました。
・ナムディン省ハイハウ県
ハノイ自然科学大学のDuc准教授、Hieu研究員とともに調査しました。Hai Hau海岸では、長年の侵食を受けて崩壊の危機にある教会などを視察しました。これらの侵食対策として、近年、多くの海岸線が大規模な堤防を用いた保全計画が進行しています。しかし、これらの堤防は一定の補修効果があるものの、度重なる台風などの被災による堤防構造物の劣化が確認されました。
本調査で、現地住民も海岸侵食・堆積や海面上昇を実感しており、その地で生活し続けることに危機感を抱いていることがうかがえました。気候変動等によって、今後、災害の規模が大きくなることが懸念されます。なお、本調査の一部に朝日新聞が同行取材し、12月9日付の「地球異変」にもその模様が掲載されました。
ICASとしては文理融合の知恵を活かして、また地元住民がもともと持っている知も尊重して、現地住民の安定した生活の一助となるよう努めます。海岸の浸食・堆積は長期に渡って変化することから、今後も現地の大学等と共同で経過調査を継続して行う予定です。
(文責 熊野直子)