茨城大学農学部の増冨祐司准教授、同地球変動適応科学研究機関の田村誠准教授、茨城県農業総合センターなどの研究グループは、日本の主要品種であるコシヒカリ(全国作付面積の35%)を対象に2010年代から2040年代までの地球温暖化による白未熟粒発生率の変化を、1km四方の精度で初めて推計するとともに、その経済影響を定量的に評価しました。白未熟粒は、高温化による日本のコメの品質低下のもっとも大きな要素であり、その増加はコメの検査等級を下げ、農家収入の減少につながります。

本研究では、コシヒカリを、沖縄を除く日本全国の水田に植えた場合を仮定し、1km四方で白未熟粒発生率を推計しました。その結果、白未熟粒発生率が沿岸の平野部から増加していくことがわかりました。またRCP8.5(今世紀末4℃上昇)シナリオで対策を講じなければ、2040年代において日本全国の平均発生率が現状(2010年代)の約2倍となることが推計されました。さらに検査等級が下がることによる2040年代の経済損失は、2010年代の約5倍(442億円/年)にのぼると見積もられました。

 本研究は、今後優先的に対策を行う地域の決定や、高温耐性品種の効率的な開発・普及といった短期的・中長期的な適応戦略の検討に向け有用な科学的情報となることが期待されます。

この研究成果は、2019年12月19日、Environmental Research Communicationsに掲載されました。