茨城大学地球・地域環境共創機構(GLEC)では、これまで東・東南アジアにおける気候変動適応科学のための研究拠点ネットワーク形成を推進してきました。その成果としてシュプリンガー(Springer)社よりオープンアクセス書籍が出版されました。

この書籍はオンラインで無料で閲覧できます。本書は、日本、ベトナム、インドネシア、フィリピン、中国、タイの6カ国35名が執筆に関わり、10章、9編のコラムで構成されています。

気候変動の影響は、既に多くの地域や分野で顕在化しており、私たちは現在のリスクと将来のリスクに同時に適応していかなければなりません。適応策アプローチの観点から見ると、科学主導型とコミニュニティ主導型の2つがあります。すなわち、モニタリング、気候変動予測、ダウンスケーリング、影響評価・脆弱性評価に基づき、適応策を立案、実施し、その政策効果を検証する方法です。これに対して、農業、漁業、災害などで日頃から実感される気象や気候の変化に対して、コミュニティが中心となって適応策を計画、実践するコミュニティ主導型適応策もあります。気候変動とその周辺分野に関する住民や地域のニーズ把握から始まり、様々な実践を通じてコミュニティ全体の適応能力やレジリアンス(回復力あるいは外的擾乱への耐力)を高めることを目指しています。これら2つのアプローチは相補的な関係であり、両者を有機的に組み合わせて適応を推進していくことが求められます。

農業、防災、資源管理等について、東・東南アジア6カ国の「インターローカル」な気候変動適応を本書では紹介しています。それぞれの地域での気候変動適応の特徴と共通点、教訓は何であるか、多くの実践例を踏まえながら議論しています。